サラリーマン初心者トレーダーの「のりすけ」です。
皆さんは「デリバティブ」や「先物」と聞いて、どのようなイメージをもたれるでしょうか。おそらく、とてもリスクが高く怖いものであるとい印象を持つ方が多いと思います。
言葉としては聞いたことがあるけど、詳しいことは分からないし、やってみようと思わないという方も多いかもしれませんが、今回は、先物取引とはどのようなものか、リスクはあるのかなどについて紹介してみようと思います。
先物取引とは
「先物取引」とは、デリバティブ(派生商品)の一種で、ある商品や指数について、将来のあらかじめ決められた期日に、あらかじめ取り決めた価格で売買することを約束する取引です。
例えば、ある商品(100円)の生産者Aがその商品を作るために必要な原材料の価格が日々変動する場合、仮に原材料の価格が高騰して100円を超えてしまったら、赤字になってしまいます。原材料の生産者Bにとっては、原材料の販売価格が50円以下だと赤字になる場合、お互いがあらかじめ「半年後に70円で原材料を販売する」という約束をしておけば、AB両者ともに赤字のリスクを解消できることになります。
赤字という最悪の事態を回避できる一方で、原材料が50円だった場合、生産者Aは本来は50円で買えたはずのものを20円高く買ったことになります。逆に原材料が100円まで高騰した場合、生産者Bにとっては、100円で売るはずのものが30円安く売ることになります。
このように、「何を」、「いつ」、「いくらで売買する」かをあらかじめ約束する取引を先物取引といいいます。
その歴史は古く、日本では江戸時代に大阪の堂島に設置された堂島米会所が最初の公設の先物取引所といわれています。
先物取引には、将来の価格変動をヘッジ(回避)するという機能があるのですが、米の価格は、天候、天災などの要因で変動します。米商人たちは米の価格を安定させたいと考え、あらかじめ米の売買価格を取り決めておくことで、相場の乱高下によるリスクをヘッジ(回避)するという目的で先物取引を生み出しました。
さらに、単なるリスクヘッジにとどまらず、米価の値上がりが見込まれる場合にあらかじめ買い付けたり、値下がりを見越してあらかじめ売り付けるなどの投資的な動きが出てきたといわれています。
先物の仕組み
取引対象(原資産)
先物取引の「何を」に当たるのが、原資産といわれる取引対象物です。原資産は、大きく分けると、①商品先物と②指数先物とに分類されます。
商品先物は、金や銀などの貴金属、原油、コーンや大豆などの穀物類といったもので、「コモディティ」とも呼ばれています。大阪の米取引が先物取引所の発祥だということからも分かるように、元々は商品先物が先物取引の起源となっています。価格の安定化に繋がるという特性とも合致するような商品になっています。
指数先物とは、日経平均株価を原資産とした日経225先物やマザーズ指数を原資産としたものとなります。株取引を行う際、夜間に取引が行われている先物の価格を参考にされると思いますが、このような各市場の株価や指数を原資産として取引を行います。
期日
先物取引の「いつ」に当たるのが期日です。一般的には「限月(げんげつ)」と呼ばれています。あらかじめ将来の売買の期日を定めて取引を約束するのが先物取引となりますが、その取引が確定する期日の前営業日を取引最終日として、それまで取引が行われて、期日当日は最終決済のみ行われます。
日経225先物などで「SQ日」(Special Quotationが決まる日)という言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、各限月の満期日(SQ日)に当たる第2金曜日の前営業日が最終売買日となります。
先物取引のメリット
価格変動リスクのヘッジ
先物取引は、元々、価格変動リスクのヘッジを目的として始まったことからも分かるとおり、価格変動リスクのヘッジとしても使うことができます。
たとえば、保有している株式の価格が相場の下落に伴って下がっている場合、株式を売却するのではなく、先物で売りを行うことで、そこで得た利益と株式価格の下落分とを相殺することが可能となります。
逆に、相場の上昇にともなって購入したい株式の価格が上昇している場合、先物で買いを行うことで、そこで得た利益を購入したい株式の購入代金に充てることで値上がりによる差額分を相殺することが可能となります。
その他にも、オプション取引などで持っているポジションと相場が逆行するリスクをヘッジする目的で、先物のポジションを持つという方法も考えられます。
資金効率が良い
先物取引は、株式を売買することで、実際に商品である株の受け渡しが伴う株取引と異なり、決められた期日に売買する取引となりますので、取引の成立時に物の受け渡しがあるわけではありません。
そのため、空約束にならないように、取引の際には一定の証拠金が必要となりますが、逆に言うと、取引時には商品代金の全額を支払う必要はなく、期日が到来した際に全額分を支払って約束を果たせば良いということになります。
さらに、レバレッジも効くので、少額の資金で大きな取引を行うことができることになるため、資金効率が良くなります。
たとえば、指数を原資産とする日経225先物取引の場合、取引単位は1,000倍となります。日経225先物価格が20,000円の場合、最小取引数量が1単位となりますので、20,000×1×1,000=20,000,000円となります。
最小取引数量でも2千万というとてつもない金額を取引することができますが、実際に必要な資金は、所定の保証金となりますので、数十万円ということになります。
つまり、数十万円の資金で数千万円の取引を行うこととなり、レバレッジは20~30倍程度となります。株式の信用取引のレバレッジが3倍ですから、桁が違いますよね。
このような大きな金額の取引はリスクが高いという場合、「日経225ミニ」という商品もあります。こちらは、取引単位が「日経225先物」の1/10の100倍で、証拠金の額も1/10となりますが、レバレッジは20~30倍程度と変わりません。5円の価格変動で500円の差額が生じることになりますが、日経225先物と比べると、安心できる範囲内ですね。
取引コストが低い
株式の取引では、「信用取引」というがあり、3倍のレバレッジで売り建てたり(空売り)、買い建てたりすることができます。空売りを用いると、下落相場でも利益を取ることができ、利益獲得のチャンスが売りだけの場合と比べて、格段に広がります。
このように大きなメリットがある信用取引ですが、売り建ての場合は貸株料や逆日歩などが、買い建ての場合は金利が発生するため、長期間保有すると取引コストがかさんで利益を圧迫してしまいます。
これに比べて、先物取引の場合は、証拠金は必要となりますが、取引手数料以外のコストは発生しないため、長期保有した場合でも、信用取引のような日々のコストは生じませんので、売買のチャンスを待つことが可能です。
また、手数料自体も、楽天証券の場合は、日経225先物は250円+税、日経225ミニは35円+税と取引金額と比較しても安くなっていますので、取引にかかるコストは少なくてすみます。
売りから入る取引が可能
通常の取引で、商品を売ろうとする場合、当然のことですが、手許に商品を保有している必要があります。これに対して、先物取引の場合は、将来のある時点での売買を約束する取引となっており、取引時点での現物の受け渡しが発生しませんので、手許に商品がなくても売ることができます。
つまり、株式の信用取引における空売り(売り建て)と同じく、あらかじめ相場が下落すると予想した場合に売り建てを行い、実際に下落すれば利益を得ることができるのです。
売りでも買いでも利益を狙うことができるという利点を活かせば、上昇・下落の往復で利益をとることも可能となります。
個別銘柄を選定する必要がない
株式の個別銘柄の取引で利益を上げていくためには、売買する銘柄の選定が重要となりますが、株価の上下は、必ずしも業績と連動する訳ではなく、当初の目論見が外れてしまって損失が生じてしまうことも度々発生します。
このように重要となる銘柄選定ですが、デイトレードであっても、中長期のトレードであっても、事業内容や財務状況、ニュースなどの事前の銘柄調査が必要となります。このような作業は、ある程度の時間が必要となるため、私のようなサラリーマンは、コンスタントに時間を取ることが難しくなります。
この点、先物取引の場合は、特定の商品であったり、特定の指数が原資産となりますので、売買したい商品や指数のみの情報収集で足ります。特に日経225先物やマザーズ先物のような指数を取引する場合、個別銘柄の上下ではなく、市場の上げ下げを予想すれば良いので、限られた時間でも対応しやすいです。
また、個別銘柄の取引と異なり、企業の倒産リスクもありませんし、大きな相場の流れを読み取ることさえできれば、サラリーマンでもゆったりとした気分で取引を行うことができます。
取引時間が長い
9時から11時半、12時半から15時までとなっている証券取引所での株取引時間と異なり、先物取引の取引時間は8時45分から15時10分、16時半から翌5時25分までとなっています。
日中は仕事のために取引ができないサラリーマンでも、仕事が終わってからも取引ができるという点は、先物取引のメリットではないでしょうか。ただ、夜中も取引が行われているため、先物取引にハマってしまって、昼夜逆転みたいなことにならないように気を付けましょう。
先物取引のデメリット
大きな損失を被る可能性がある
今年発生した原油価格の大暴落は記憶に新しいと思いますが、4月には原油先物の価格がマイナスになるという事態が発生しました。価格がマイナスということは、売り手が代金を支払って商品を引き取ってもらう必要があるということです。
マイナス価格は極端な例かもしれませんが、先物取引は、レバレッジが効いている分、このように大暴落で取り返しがつかないような大損害を被る危険性があることは忘れてはいけません。
手許にある資金以上の取引をしているということは、代金を支払うことができない状態に陥るリスクがあるわけで、最悪の場合、破産してしまうことも考えられます。
ただ、資金管理を徹底し、リスクをコントロールすることで、そこまでの大きな損失を被らずに運用することもできると思いますので、一発儲けてやろうという考えを持たずに、慎重にトレードすれば、過度に恐れる必要はないと思います。
利益の確定申告が必要
先物取引では株取引と違って特定口座を利用することはできないため、先物取引で得た年間の利益は、申告分離課税の「雑所得」として確定申告を行う必要があります。税率は20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)となります。
雑所得扱いとなってしまうので、会社に住民税額が増加したことが原因で副収入があることが知られてしまうという難点があります。投資を禁止している会社は多くないと思いますので、投資で副収入を得ていること自体は問題ないと思いますが、気分的に嫌ですよね。
この点については、確定申告の際に、住民税の徴収方法を給与から天引きされる「特別徴収」ではなく、自身で納付する「普通徴収」にすることで回避できるようですが、手違いで特別徴収のままとなっていて知られてしまうケースもあるようです。
また、いずれにせよ、確定申告を行い、税金を納付するという作業が必要となりますので、この点が面倒だという方は、先物取引は向いていないかもしれません。
まとめ
今回は、デリバティブ商品である「先物取引」についてご紹介しました。個人的にも、個別株の売買で損失も出ているし、銘柄選定に十分な時間をかけられない場合もあることから、先物取引に興味を持ち、先物・オプション口座を開設しました。
日経225先物はさすがに怖いので、日経225ミニとマザーズ先物を細々と取引しているところですが、ボチボチと利益も出ているところです。
始めるまでは、用語や仕組みも良く分からないし、怖いイメージもありましたが、これまで行ってきた株取引の延長線上で取引を行うことができ、細々と取引することで、株取引でのポジポジ病の解消にもつながっています。
油断して気持ちが大きくなることなく、慎重に取引を続けていくことで、株取引以外の収入源としていきたいと考えています。
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